大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

鹿児島地方裁判所 昭和55年(わ)262号 判決 1980年7月31日

本籍

鹿児島県垂水市松原町四七番地

住居

同県鹿屋市朝日町七番一七号

産婦人科医

桑波田景一郎

昭和四年七月七日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官寺田豊作出席のうえ審理して、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金二、〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金四万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、鹿児島県鹿屋市朝日町七番一七号において産婦人科医院を経営しているものであるが、自己の所得税を免れようと企て、同医院の経理全般を掌理している被告人の妻規子と共謀のうえ、自由診療収入の一部を正規の帳簿に記載しないで除外し、絵画、貴金属あるいは仮名の有価証券を購入するなどして所得を秘匿したうえ、

第一、昭和五二年分の総所得金額は一億二、九八七万五、三六六円で、これに対する所得税額は八、〇四六万四、四〇〇円であるのにかかわらず、昭和五三年三月一五日、鹿児島県鹿屋市向江町二八番三号鹿屋税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は六、四二四万四、五九〇円で、これに対する所得税額は三、二一六万九、六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により四、八二九万四、八〇〇円の所得税を免れ、

第二、昭和五三年分の総所得金額は一億二、五〇三万九、九四二円で、これに対する所得税額は七、五五八万六、七〇〇円であるのにかかわらず、昭和五四年三月九日、前記鹿屋税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は七、五二〇万二、九二四円で、これに対する所得税額は三、八六一万一、七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により三、六九七万五、〇〇〇円の所得税を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一、被公人の当公判廷における供述

一、被告人の検察官に対する供述調書

一、大蔵事務官作成の被告人に対する質問てん末書七通

一、被告人作成の上申書二通

一、大蔵事務官作成の脱税額計算書及び脱税額計算書説明資料

一、大蔵事務官作成の査察官調査事績書一一通(請求者検察官、証拠等関係カード番号6・7・8・12・18ないし24)(以下、単に算用数字のみで示す。)

一、木藤克一(一〇通)、棟永計、赤塚隆博(二通)、宮本勲(二通)、遠矢英一郎、番園ムツ子、田中隆各作成の各証明書(25ないし35・38ないし42・45・55)

一、木藤克一、棟永計、有永文雄、桑波田規子各作成の各上申書(36・37・43・49)

一、大蔵事務官各作成の検査てん末書及び写真撮影てん末書

一、児玉智恵子作成の取引内容の照会に対する回答書

一、大蔵事務官作成の浜田博、棟永計、平国瑞、田中隆、木下末、内山勇雄、時吉京子(二通)、桑波田規子(一〇通)に対する各質問てん末書(51ないし54・56ないし69)

一、桑波田規子の検察官に対する供述調書

一、押収してある青色申告者書類つづり一綴及び分娩記録簿一冊(昭和五五年押第八二号の1、2)

判示第一の事実につき

一、大蔵事務官作成の査察官調査事績書(3)

一、久保春夫作成の上申書

一、押収してある昭和五二年度日計表一綴(同押号の3)

判示第二の事実につき

一、大蔵事務官作成の査察官調査事績書二通(4・5)

一、楠原マリ子作成の取引内容の照会に対する回答書

一、押収してある昭和五三年度日計表一綴(同押号の4)

(法令の適用)

罰条

判示各所為につき所得税法二三八条、刑法六〇条

所定刑中懲役刑及び罰金刑を併科

併合罪の処理

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条

犯情の重い判示第一の罪の懲役刑に法定の加重

同法四八条二項

労役場留置

刑法一八条

懲役刑の執行猶予

刑法二五条一項

訴訟費用の負担

刑事訴訟法一八一条一項本文

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 林五平)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例